推しが卒業したお話.3


今月はクリスマス。そして重要なお知らせがあるとのこと。
まぁ、ね。わかるよ大体。しんどそうにしてたしオタクと繋がりがバレて解雇みたいなダサい理由じゃなければなんでもいい。来世で幸せになってくれ。
正直察していたところがあるのでショックは受けていないつもりだったが、物販でいつものように「よっ」と声をかけたら泣き出されてしまいスタッフと二人でめちゃめちゃびっくりしてアタフタしたせいで記憶が飛んでいる。お披露目からずっと来てくれてほんとアウウウェみたいなことを言っていたが周りの目が痛いのとギャン泣き一歩手前のせいでよくわからんかった。
わからんかったが、かわいかった。
キモヲタらしく「繋がりが疑われるからやめろやーw」と言いつつも卒業したらもう何も顔を見る機会すらないんだよなと悲しく思った。向こうの人生に関わりたいとは思わなかったが、忘れられるのは嫌だった。歪んだ欲求のためにとりあえずでんぐり返しでチェキを撮らせた。ダサかった。

 

年が開けると流石に気持ちも落ち着いて卒業に向け自分ができる範囲で顔を出し少しでも自分の中に刻み込もうと努力をした。ワンマンもあったしね。ワンマンについては思ったより人がいたことと思ったより曲数があったねということ、思ったより物販に並ぶ人がいたのでめちゃめちゃ回りが悪かった事だけ覚えている。あとは友達のオタクが女オタオタしてて殺そうかと思ったくらい。

 

卒業間近になりオタクもしょんぼりしつつ締めに入っていた。俺も少しお手伝いを頼まれたのでやりつつも、それより自分のために時間を使いたいなぁと思ってしまった。でも彼女が最後に喜んでくれればそれで良いと思った。
数を重ねるごとに「もう終わる」という気持ちが日に日に濃くなる。自分がもっと話を聞いていれば、お金を落としていれば、人を呼べれば何かが変わったのかなと後悔しながらも今のステージにいる一瞬を 目に 脳に 焼き付ける事に必死な一ヶ月。終わったからこそ思うけど自分が何かをやったところで何も変わらなかったんだろうな。そう思う事で自分の力不足を肯定する。

 

卒業の日
この日のステージは奇しくも自分が初めて「地下アイドルのライブ」に行ったハコであった。自分の中で今の推しが卒業したら推しを作らないと決めていたので実質自分にとっても卒業ライブ。始まりの場所でオタクを終えるのかぁ、と謎の感慨にふける暇もなくオタクとリウム点灯の作戦を練り周知させる。
彼女がステージに立ち、最後のライブが始まる。流石にどんな曲を歌われてもどうしようもなかった。きちんと最後の姿を見ることに必死だった。まぁサークルモッシュがある曲はオタクとして盛り上がってる感のためにめちゃめちゃ走り回った。回し車にのるハリネズミのように。
終わってしまえばあとは終演後物販。元々ない予定だったのにねじ込んだので事前にチェキ券を買わないと回せない方式だったので用意がいいオタクはきちんと取っておいたチェキ券を出す。今後は知らないがここのグループでの最後のチェキ券、最後の物販、最後のお話。実は前に今後どうするか相談を受けていたので、これからも頑張れるといいね。また専用垢で今後についての考えは言うね。というキモヲタらしからぬまともなやり取りをした。
それがアイドルの彼女とした最後の物販トークだった。
全てが終わり、オタクの用意したメセカ渡しの儀式も終え、物販を締め帰路につく。
今後何かするのかな、正直人前に出るのは性格的に向いてないよな。顔いいし性格も刺さる人にはぶっ刺さるし、そういうところを相談してもらって少しでも支えになってあげられればな。そしたらやっぱり辞めなかったのかな。
こんなに好きだったのに全然伝えられなかったな。でもオタクだし言ったところでなにもないしな。いやでもそれでもしかしたら…。
答えの出ない質問を自分に投げかけながら一人になりふと思う。

 


宿題チェキ返ってきてねぇ!!!!

 

 

一年と数ヶ月、ずっと見てきた推しが卒業してしまったお話。